「J-PARCハローサイエンス」ミュオンに恋して~究極の精密測定で挑む宇宙のひみつ~

| テーマ | ミュオンに恋して~究極の精密測定で挑む宇宙のひみつ~ |
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| 概要 | ものの性質を究極の精度で測定していくと、人々が考えていた物理法則の"ほころび"、すなわち、新しい宇宙のひみつを見つけることができます。特に素粒子ミュオンは、人類にとって取り扱いやすい粒子で、かつほど良い質量を持っており、宇宙の謎に対する感度が高いとされています。J-PARCでは、世界最高強度でミュオンを大量に生成し、ミュオンの性質を精密に調べています。講演では宇宙の謎に迫るためのミュオンの超精密測定実験についてご紹介致します。 |
| 講師 | 西村 昇一郎(Nishimura Shoichiro) J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン |
| 日時 | 10月31日(金)18:00~19:00 |
| 会場 | AYA'S LABORATORY 量子ビーム研究センター (AQBRC) 1階 ※ オンライン(Zoom)併用 |
会場周辺地図 |
◆ 講演動画 ◆ |
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Q and A
※ 後日いただきました質問等について以下に回答いたします。
- Question - 1 -
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➤ ミュオンは電子の200倍の質量で電子に運動エネルギー付与でいいのか、光速の〇%くらいまでの速度エネルギーを持つのか、ニュートリノの数の多さでできるのか。
- Answer - 1 -
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➤ ミュオンが崩壊するときの運動学の質問としてお答えします。
まず、ミュオンが崩壊するときに大事な点は、電子の他にニュートリノ2つが (現在のところ確立している、素粒子の標準模型においては) 必ず放出されます。これはレプトン数保存 (と電荷保存) の法則によるもので、同じ世代のペアとなる粒子になってもいいけど、勝手に一人で消えたり現れたりしてはいけない、というものです。で、ミュオンが静止している状態で崩壊すると、崩壊する前のエネルギーはミュオンの質量になり、それを電子とニュートリノ2つで分け合うことになります。高校の物理で習う、エネルギー保存則と運動量保存則を使うと、どちらも一意に決まらず、最大エネルギーは初期エネルギーのほぼ半分でほぼ光速度ということが分かります。実際、崩壊して放出される電子のエネルギーは連続分布をしています。
- Question - 2 -
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➤ 太陽の中でクォークはどう動くか。
- Answer - 2 -
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➤ この質問はおそらく非常に難しくて、私には正しく答える自信がありません。 まず、クォークを支配している強い力は非常に強くて、クォーク単体での取り出しに成功した例はありません。必ず2つか3つが束縛した形で現在の宇宙に存在しています。そして、太陽を構成している原子核、核子の内部ですら、クォークの運動を完全に理解できているかというと、まだまだ謎だらけな状態です。
詳しくはハドロン関連の動画をご覧ください。第86回J-PARCハローサイエンス
https://youtu.be/KbV8xLmeQEQ?si=P-NwFoCbmEWNiyuIハイペロンをつくって核力の正体を暴け!
https://youtu.be/M4QfhZXL_K0?si=qEOvCIzJqxfHy2VW
- Question - 3 -
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➤ ミュオンを使って原子炉の材料の中性子脆化の評価をできないか。
- Answer - 3 -
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➤ 中性子による材料の脆化現象で、格子欠損によるものなら、ミュオンでも評価ができるかもしれません。中性子ではありませんが、実際にミューエスアール (µSR) 法を用いた水素脆性を評価する研究などがあります。
