
さて、交換作業も無事に終わって、いよいよ新しいターゲットを使って試験をしてみたところ・・・、何と、地震の前よりも良い結果が得られたのです! これには、みんなとても喜びました。苦労してターゲットを交換して、本当に良かったと思いました。
みなさん、こんにちは。水との戦い、パート2です。前回はトンネル内に溜まった地下水の排水についてお伝えしました。今回は、その後の復旧作業についてです。
また、トンネルもそのままでは水漏れは止まりません。天井から落ちてくる地下水が機器にかかってしまうものもあります。少しでも早く、漏れてくる水を止めなくてはなりません。 水漏れを止める作業は、とてもたいへんでした。まず床や天井、壁などをきれいに拭き取って、水が漏れてくる場所を見つけます。細いひび割れを見つけたら、その場所にウレタンという樹脂を注入します。
最初に、ひび割れに沿ってドリルで小さな穴を開けます。その穴からウレタン樹脂を注入します。注入されたウレタンは膨張するので、それによってひび割れのすき間が埋められて、水漏れが止まるのです。 ひび割れした箇所は何カ所も見つかりました。50GeVシンクロトロンはトンネルの長さが1,600mもあります。修復する場所もたくさんありましたが次々と作業を進めました。
また床ばかりでなく、地下トンネルの天井からも水漏れがあります。天井のコンクリートにドリルで穴を開け、そこにウレタンを注入する作業は、とてもたいへんな作業でしたが一生懸命おこない、トンネルの水漏れはほとんど止まりました。 このようにしてJ-PARCの復旧作業は一歩一歩すすめられたのです。 (続く) 

そのため固まった後に、髪の毛よりもさらに細いすき間やひび割れができてしまうことがあります。この位のひび割れはコンクリートの強さや構造には全く影響がないのですが、地下水はしみ込んで来てしまう場合があります。 しばらくたつと、コンクリートが地下水と反応して結晶になり、ひび割れやすき間は徐々に埋まっていき、水はしみ込まなくなります。J-PARCの加速器の地下トンネルも、すでに水はほとんどしみ込まなくなっていました。
でも地震の影響で、J-PARCは1週間以上停電の状態が続きました。停電の間は電気で動く排水ポンプは動かせません。水は少しずつ溜まっていき、10pくらいの深さになってしまいました。トンネルの天井部分から垂れてくる水もありましたが、地震からしばらくの間は停電で照明もなかったので、なかなか対策ができず、装置に水がかからないようにビニールシートを被せるのが精一杯でした。
しかし地震の影響で一部の道路は通行できず、またガソリンも不足していたので車が動かせず、硫酸を買ったり集めたりすることができませんでした。困っていた時「私たちが持っている硫酸を使って下さい」と、茨城大学や筑波大学、あるいは他の研究機関の皆さんが助けてくれたのです。 皆さんの支援に支えられて、無事に排水作業を進めることができました。作業が進み、地下水が機械へ与える影響や被害を最小限に抑えることができました。本当に感謝しています。
X線も放射線ですからしっかりと遮蔽しますが、遮蔽するためには鉄や鉛などの重い物質がとても効果的なのです。J-PARCも運転中に発生する放射線を遮蔽するために、鉄やコンクリートなどの重い物質をブロックとして積み重ねて使っています。
今回の地震で、この鉄やコンクリートのブロックが少しずれてしまいました。そのずれを直すため積み木のように積み直しをすることが必要でした。しかしその数や量はものすごいものです。 写真の物質・生命科学実験施設では、ひとつの重さがおよそ3トンから7トンにもなる遮蔽ブロックが、数にして530個、総重量で2,800トン使われています。これを一度はずしてから、また元通りに積み直したのです。