物質・生命科学実験施設

ミュオン科学実験施設

J-PARC ミュオン科学実験施設の概要

わが国は、湯川博士によって中間子の存在が予言された歴史を持っています。パイオン(パイ中間子)やパイオンが死んで生まれるミュオンは大型加速器によって人工的に大量に作り出すことができ、様々な研究に応用されています。
統合計画では、3 GeV、333 μAという世界最強のパルス状陽子ビームから、数eVの超低速をはじめ、〜100 MeVの高速に至るエネルギーを網羅する最先端のミュオンビームを発生するミュオン科学実験施設が建設されます。ミュオン科学実験施設で得られる、強度が飛躍的に増強されたミュオンを用いて、物性材料研究、ミュオン触媒核融合等の先端的な研究を始め、素粒子物理学、原子核物理学、原子分子物理等の基礎的研究、化学、生物学、医学への応用と幅広い学際領域にわたる科学研究が展開されます。

ミュオン科学実験施設における研究の概要

正のミュオンは、生まれながらにして持っているスピン偏極の性質を利用して、物質中の原子レベルでのミクロな磁場の分布や揺らぎを観測できます。
また、大強度の超低速ミュオンは、半導体・磁性体・高温超伝導体・新物質等のキャラクタリゼーションに使われ、表面・界面における磁気的な性質あるいは、化学反応の時間変化(ダイナミクス)を調べるユニークな測定手段になるものと考えられます。 負のミュオンは、重水素と三重水素の核を引き寄せ、小さい分子を作り核融合を引き起こすことができます。ミュオンの寿命の間に連鎖的に200回をこす核融合反応(ミュオン触媒核融合)が起こり、21世紀のエネルギー源として期待されています。また、優れた非破壊分析の検査法として、考古学や、骨そしょう症などの医学診断の分野での実用化も期待されます。
下図はミュオン科学の歴史的発展の経緯を示したものです。数多くの研究分野が日本のグループによって開拓されていることがわかります。来たる21世紀には、これらのすべての研究分野がJ-PARCに結集し、世界最強のミュオンビームを用いて強力に推進されることでしょう。

ミュオン科学施設概念図