ハドロン実験施設の紹介

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施設の配置

 ハドロン実験施設は、J-PARC敷地内で最も南側に位置しています。リニアックで180MeVまで加速された陽子ビームは3GeVシンクロトロンでさらに3GeVまで加速され、物質・生命化学実験施設(MLF)と50GeVシンクロトロンに入射されます。3GeVの陽子ビームは50GeVシンクロトロンで最大50GeV(現在は30GeV)まで加速され、ハドロン実験施設とニュートリノ実験施設に取り出され、実験に利用されます。

Hadron_BirdsEye

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スイッチヤード一次ビームライン

 スイッチヤード一次ビームラインは、加速器から取り出された陽子ビームをハドロン実験ホールまで輸送するためのビームラインです。大強度陽子ビームでは途中のわずかのビーム損失でも機器に深刻なダメージを与えることから、放射線耐性の高い電磁石やビームモニタが使われています。

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スイッチヤード一次ビームライン用電磁石

 スイッチヤード一次ビームラインでは、200mの区間に約50台の電磁石を配置して陽子ビームを輸送します。これらの電磁石多くは、アメリカのスタンフォード線形加速器センターで製作され、使われていたものを転用し、KEKつくばキャンパスで2005年まで行われていたK2K実験ニュートリノビームラインの一部に使っていました。KEKつくばキャンパスの12GeV陽子加速器施設がシャットダウンした後、J-PARCでも再利用するために磁極や端末の改造を施して再使用しています。

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ハドロン実験ホール

 ハドロン実験ホールは、幅60m、長さ56mの建物で、二次粒子生成標的, ビームダンプ、二次ビームライン、実験装置等が設置される、ハドロン実験施設の中心となる建物です。高さは地上16m、地下6mの半地下構造です。現在二次ビームラインとしてK1.8BR、K1.8、K1.1BR、KLの4本のビームラインが建設され、それぞれに実験エリアが設置されています。実験エリアでは、ユーザーがそれぞれの実験に合わせて製作した様々な標的や測定装置を設置し、実験を行います。ビームライン名称の「K」はK中間子を表し、1.8等の数字は輸送できる二次粒子の最高運動量(GeV/c)を表しています。KLビームラインの「L」は、寿命の異なる2種類の中性K中間子(K0L、K0S)のうち、寿命の長いK0L中間子を輸送していることを表します。

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 下の図はハドロン実験ホールの南側を撮影した写真です。実験ホールの中央には二次粒子生成標的と一次ビームラインを格納するためのコンクリートで作られたトーチカ状の構造物があり、二次ビームラインの実験エリアはその外側にあります。ハドロン実験ホールでは、電磁石、実験装置、遮へい体等の重量物を運ぶため、最大荷重40トンの天井クレーンが備えられています。

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二次粒子生成標的(T1)

 一次ビームラインを輸送されてきた陽子ビームは、実験ホールの二次粒子生成標的に照射され、K中間子やπ中間子等の二次粒子を発生します。二次ビームライン下流での二次ビーム強度を最大にするため、照射点の大きさは半径約2〜3mm程度に小さく絞られます。一次ビームの持つビームパワーが小さい一点に集中するため、二次粒子生成標的の温度は高温になり、いかにして冷却するかが重要な課題です。  ハドロン実験施設では、下図のような厚さ5.4cm、直径36cmのニッケル金属の円盤の端に一次ビームを照射し、円盤の下部を水につけた状態で回転させて冷却する方式がとられます。

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大型真空箱

 二次粒子生成標的で発生したK中間子やπ中間子等の二次粒子は、二次ビームラインで実験エリアまで輸送されます。二次粒子生成標的周辺は、二次ビームライン最上流部でもあり、非常に複雑な構造となっています。下図は、T1標的と二次ビームライン最上流部の写真です。

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二次粒子生成標的に照射された陽子ビームのパワーの内、K中間子等の二次ビームに転換するのは僅かで、大部分のパワーはγ線や中性子となって下流に放出されます。従って、二次粒子生成標的のすぐ下流の二次ビームライン最上流部の電磁石は、二次粒子生成標的からの放射線によって加熱されます。また、通常のビームラインでは、電磁石と電磁石の間は真空ダクトで接続されますが、上記のような環境では真空ダクトを設置し、接続することが困難です。これらの困難を克服するために、大型の真空槽を設置し、その中に設置した電磁石を真空中で運転することによって真空ダクト自体を省くことができます。下図は大型真空箱の概略図です。二次粒子生成標的の周辺は残留放射線量が非常に高くなるため、電磁石の電気および冷却水の接続をビームラインから5m上方で安全に行えるようになっています。

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ビームダンプ

 ハドロン実験ホールのすぐ外側には、加速器から取り出された大強度の陽子ビームを最大750kWまで吸収できるビームダンプが設置されています。下図はビームダンプの構造図です。大強度の陽子ビームを受ける吸収体のコアとして、幅2m、高さ2m、奥行き5mの銅が使用されています。銅コアの中心部にはコーン上の穴が開けられており、陽子ビームを徐々に削りとることによって、熱負荷が均一になるように設計されています。写真は銅コアを構成する銅ブロックの1つで、ブロックの外側に水を流して冷却します。
 銅コアの周囲は放射線遮へい用の鉄及びコンクリートブロックで覆われており、ビームダンプの総重量は1万トン以上に及びます。また、銅コアを含む中心部分は、将来ハドロン実験ホールが下流に拡張された際に安全に移動できるように、あらかじめ移動用のレールが設置されています。

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